うどん食う人びと


 映画『UDON』が絶賛公開中だそうで、香川県ではローカルメディアや県のお役所が「うどんブーム再び!」とさいあがって*1おりますが、そんなこととは関係なく、今日の昼もうどんを3玉食いました。


 さいあがっている人たちがおっしゃるには、讃岐うどんブームは3年前に終わってて、今回の映画でもってその再来を狙っているんだそうです。ふーん。どういう状態がブームで、それがどういう状態になったときに「終わった」のでしょうか。県民はずーっと前から淡々とうどんを食い、いくつかの有名店には何年も前から今に至るまで、途切れることなく、県外ナンバーの車が押し寄せています。また、新しい店もいまだ増え続けています。


 3年前に何があったかといえば、全国メディア露出の激減と、県内から、東京を始めとする県外に打って出たセルフうどんチェーンの退潮です。ブーム≒東京進出・全国区という田舎にありがちな話だったわけですね。3年前に終わったものがブームだとしても、別に終わっていいものだったのではないでしょうか。「ブーム」が終わったからといって県内のうどん屋がバタバタと潰れたりなんてことはおこりませんでしたしね。


 そもそもスローフードを標榜するうどんと、そういうファーストフード的全国チェーン展開は容易に相容れるものではありません。工場で大量生産してトラックでガソリン炊いて長距離輸送する麺がスローフードでしょうか。


 それはいいとして、最近、讃岐うどんソウルフードとしての底力をあらためて実感したことがありました。このド田舎にもここ数年、コンビニが乱立しているのですが、まあほんとによく出来ては潰れ出来ては潰れしています。自殺者や夜逃げもたくさんでたことでしょうねえ。店が潰れてもたいして痛くも痒くもないコンビニのフランチャイズシステムと、コンビニ経営の実際を知らずに契約してしまったオーナーの問題ですが、潰れた店舗はたいていそのまま借り手もなく放置されるか、あるいは年寄り騙して数ヶ月で逃げる系健康ショップが入ります。ひどいもんです。そういうお話がわたしの生活圏内でもいっぱいあるのですが、最近立て続けに2軒、そういったコンビニ跡地がうどん屋に生まれ変わりました。東京から入って来たものの残骸を地元の食文化が見事に再生させたわけです。こっちのほうが東京進出よりずっといい話だと思うんですけど、どないなもんでしょうね。


もの食う人びと (角川文庫)

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*1:舞い上がってふざけている様を表す讃岐弁