競輪祭はなんのお祭りかというと
競輪発祥を記念するお祭りであります。
http://www.keirin.go.jp/land/special/2005/81/what.html
草創期から現在に至るまで基本的に日本国民から白眼視されてきた競輪でありますが、そのせいもあってか歴史がちゃんと語られることは少ない。図書館に置いてある『競輪○十年史』は胴元が編集したものだからごく一面の歴史でしかないし、本屋で競輪の歴史の本など見た事がない。
断片的な歴史ならばweb上でも知ることができるが。
http://www.keirin-shiryokan.org/history/index.html
↑競輪資料館
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/keirin/shobu/k_joho-2.html
↑四日市の予想屋さんによる回想記
http://home4.highway.ne.jp/keirin/index.html
↑研究者の方が公開している競輪の歴史に関する論文
当たり前の話だけどどんなクサいものにも歴史はあるし、そういう世間から嫌われたり誤解を受けている事物のしっかりした歴史書は、読み手のパラダイムシフトを誘ったり、ときには表の歴史の欺瞞を暴いたりして面白いことが多い。
例えば音楽では、『日本フリージャズ史』が長年ハイミナールや不毛なセクト闘争とセットでしか語られてこなかった日本のフリージャズを、純粋に音楽面に光を当てることで再評価に導いたし、『ブラック・マシン・ミュージック』はテクノ/ハウスに対する偏見を一気に吹き飛ばす面白さ。
やくざにだって歴史はある。『やくざと日本人』、『やくざ戦後史』はやくざの存在を通して近世以降の日本の社会構造や(「反体制」側も含めた)政治の欺瞞を浮き彫りにする、日本近世〜現代史の名著。
『やくざ戦後史』には川崎競輪場が登場するエピソードもある。60年安保の最中、連日のデモ隊にビビった偉い政治家は、アイク米国務長官訪日に際してやくざの親分衆に警備の支援を依頼する。関東のとある大親分が訪日当日に配下1万人の集合場所に予定していたのが川崎競輪場だった。当時の公営競技場はノミ屋コーチ屋に限らず警備などでも完全にやくざのシマだったから驚くべきことではない。親分衆は自腹を切って精力的に準備を進めたが、結局アイクは訪日をキャンセル。後でやくざに支払われるはずだった金は政治家が飲み食いに全部使ったとか、政治工作に流用されたとか。
kastさんがid:kast:20050125で紹介されていた『最相葉月のさいとび』を図書館で借りてきて、とりあえず競輪エッセイ部分だけ読んだ。「けいりんマガジン」での連載コラムがメインだけど、あのくされ雑誌にこんなのが載ってたとはと驚くほどの面白さ。競輪に関わる人たちの歴史を通じて競輪や日本の戦後史を見る、という視点がはっきりしているのもいい。一番面白かった話は、競輪の創始者として知られる倉茂貞助が戦後間もない頃中国共産党軍の捕虜となった米兵を救出したことが、自転車競技法案をGHQが認める決め手となったというエピソードだ。この辺の話をもっと詳しく知りたいなあ。
地方財政にどれだけ貢献したとかそういうことはもういいから、日本でしか生まれ得なかった異形の博打「競輪」のダイナミックな歴史書が読みたい。日本社会の特質や戦後日本の諸問題が浮き彫りになってきっと面白い・・・と思うんだけど。
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