実力伯仲の三分戦


 競輪をただ純粋に観るだけなら、一番面白いレース形態は三分戦だと思います。それも三線全ての実力が高いレベルで拮抗しているほうが面白い。それぞれが互いの動きに有機的・即興的に反応しあって、赤板からゴールまで目が離せない展開になります。これが四分戦だと、他のラインの動きを当てにする奴や蚊屋の外に置かれちゃう奴が出てきてそうはいきません。車券握って観るならそんなことはどうでもよくて、全部楽しいんですけど。


 最近よく聴いているのが、Altered Statesというバンドの『BLUFFS』というCDです。Altered Statesは今年結成16周年を迎えた、内橋和久、ナスノミツル芳垣安洋からなるギタートリオなのですが、たいていライヴでもCDでも完全即興で演奏します。完全即興とはいっても全然難解でもなく、かといって手癖に頼ったり予定調和にもならず、各メンバーが有機的に絡み合って、ダイナミックかつ緊張感に溢れた音楽を紡ぎ出してゆきます。最近はUAのサポートでも活躍している内橋がエフェクターを駆使したギターで空間を彩り、アングラ界隈のベーシスト第一人者のナスノがどっしりと、かつ柔軟にボトムを支え、芳垣のドラムがシャープに暴れます。芳垣は渋さ知らズROVODCPRGなどの大所帯の屋台骨を支えるドラマーというイメージが強いですが、このバンドや故・大原裕の「サイツ」のような小編成で変幻自在に叩いているほうが個人的にはより魅力的です。


 ジャズで言うとRiverside時代のビル・エバンストリオ、競輪で言うと村上義弘・小嶋敬二・吉岡稔真の三分戦、そんな音楽です。