KEIRIN化に反対する理由その1〜スピード化について


 ネクストジェネレーションレースというのが今年の前半行われましたが、それを告知する文章にこんな一節がありました。

【目 的】  自転車競技である「競輪」のスポーツ性をよりアピールするため、スピード感溢れる競走を具現化する「新しい競走」の研究の一環として、オリンピックや世界選手権等で実施されている「KEIRIN」競走等をエキシビションレースとして実施する。


 スピード感が増大すればスポーツ性も高まるという理屈なんですね。というわけでKEIRINや、誘導スピードを速めた競輪の模擬レースが行われました。これ、観てないんですけどどうだったんでしょうね。海千山千の競輪選手によるレースと違って素直な競輪学校の生徒の競走ですから、見た目にどう映るかはともかく、参考にはならないと思いますけど。


 こうした試みは過去にもあって、2000年の6月に誘導追い抜き禁止ゾーンが拡大されています(参照)。このとき誘導スピードも若干上がったはず。この影響でレースの走破タイムはおおむね10秒前後短縮されました。この改正までは、赤板で誘導を切って最終ホームまで丸まる一周チンタラしたスプリント戦が展開されることがままありましたからね。S級上位でこれをよくやってたのが栃木の神山という人と茨城の十文字という人でした。当時の近畿の競輪客でこのレース(参照)のことを苦い思いとともに今でも覚えている人は多いのではないでしょうか。この改正の後、さらにイエローラインの新設によって、赤板〜最終ホームでの極端なスプリント戦はほぼなくなりました。逆に競走が単調になったと思うことがあるくらいです。


 そしてさらに誘導スピードを上げるとなると、きっと競走はもっと単調になります。特にA級戦。KEIRINでは最終的に誘導スピードが45〜50km/hまで上がりますから、前とって誘導を使えるだけ使って後方の仕掛けに併せて発進する、二段駆けのようなレースが主流になるでしょう。かといって誘導を打鐘あたりで自動的に退避させちゃうと制度を変えた意味無し。困ったもんですね。こちらでも書きましたけど(参照)、KEIRINは基本的に、目が回るような250Mバンク用の競技だと思います。


 最初の告知文に戻りますと、「スポーツ性」のアピールは誰に対するアピールかと考えるに、新規にファンになろうとする人に対するものだと思うんですね。で、競輪を初めて観る人が一番違和感を覚えるのが誘導員を先頭にした周回。これは結局誘導スピードを10km/hやそこら上げたところで変わらないと思います。風圧を避けるためだと説明しても、他の競技に類するものがないため、なかなか違和感は消えません。それならば、端的に誘導員の付いている時間を減らせばいいと思います。400と500なら1周回、333なら2周回減らしましょう。*1並びを形成するための時間が減るのでスタートでの出渋りも解消するかもしれません。これは誘導の速いKEIRIN化でも同様でしょうけど。

まとめ

 日自振の推進するスピード化は(特に下級レースや自力型の少ないレースでの)レースの単調さを増すだけに終わる可能性が高い。新規ファンを求めるならば、参入障壁である誘導員の存在感を減らす方向でいくほうがよいのでは。

*1:まあわたしらのようなドロドロ客にはどっちでもいいんですけど