治安はほんとうに悪化しているのか

治安はほんとうに悪化しているのか

治安はほんとうに悪化しているのか


 読書の秋ってことで久々の読書カテゴリです。ただし、以前のように単に読書記録を付けるのではなく、競輪の話にこじつけられるものだけ紹介していきたいと思います。


 治安悪化幻想については知っている人は知っていたわけですが、その点について、元東京都治安対策担当部長という「悪化説側」の最前線にいた方が書いた本です。とか書くとなんだか内幕本のような印象を受けますが(審議会で御用学者(前田某とか)がこんなトンデモ発言していました!とか)、全然そんな話は出てこなくて、論点を丁寧に分けつつ、各種統計資料を仔細かつやさしい語り口で検討している本です。おすすめ。さらに掘り下げて調べたいと思ったらこちらもどうぞ。→

犯罪統計入門―犯罪を科学する方法 (龍谷大学矯正・保護研究センター叢書)


 論点は大きく分けて二つ。統計的に治安は本当に悪化しているのかということと、いわゆる「体感治安」の問題です。結局治安は悪化しているかどうかと言われれば分からないけれども(これは誰も分からないと思います)、警察やマスコミのプロパガンダにはちゃんと意図がありますよということが書かれています。


 さて、治安といえば我々競輪客はときとして地域の治安悪化の原因として忌み嫌われることがあります。サテライト設置計画が花盛りの昨今ですが、たいていは反対運動が起こります。特に都市部およびその郊外では激しくなります。その結果、人口の多い地域にはなかなかサテライトはできなくて、出来たと思ったらたいてい東北とか兵庫の山の中とか四国の最果てとかそんなんばっかり。都市圏の人達の反対運動が激しいのは、治安悪化幻想に囚われている人たちが、サテライトによって治安が悪化するのではないかとさらに不安を募らせるからではないでしょうか。もちろんそういう傾向は「公営ギャンブル悪玉論」の一環として昔からありましたけど、近年になって治安不安の心的要素が拡大し、その結果、反対運動に力を与えているのではないかと思うのです。地域共同体が比較的まだ残っている田舎では都会ほど体感治安は悪くないですから、その面でそれほど反対運動に力が加わることはない。


 一般市民の皆様の治安不安増大を背景に、警察・検察は今まで罪に問わなかったり微罪として処分してきた事例を厳しく取り締まるようになりました。東京の公衆便所落書き事件や共産党のビラ撒きが住居侵入に問われた事件などは言論の自由に関わるとあって話題にもなりました。ところで、サテライト反対運動には共産党の皆さんが関わっていることも多いですが、治安悪化を持ち出して反対するのは敵に塩を送るようなものだと思いませんか?お仲間がビラ撒いてお縄になった件と治安うんぬんの根っこは同じだと思います。とりあえず上記の本でも読んでもちつけと言いたいです。