落車・大量落車は本当に増加しているのか


 昨夏、KEIRIN化反対キャンペーン開催中にわたしこんなこと書いたんですけど

ところで、落車事故って増えているんでしょうか?これ、ちゃんとした統計資料を見てみたいです。KEIRINは滅多に観る機会がないですから落車にもなかなか出くわしませんが、一日100レース以上行われることもざらにある競輪ではそりゃ大量落車もたまにはあります。そういった事象をうまくまとめて提示すれば、事故が頻発しているように読み手に思わせることも可能です。だからこそちゃんとした統計資料が欲しい。
KEIRIN化に反対する理由その2.5〜ルールと事故


 根が非常に怠惰なもので、今の今まで自分で調べることを怠っておりました。そうしましたところ、そんなわたしを見かねてか、1月29日のこちらのエントリのコメント欄(参照)において、ネブトさんとzakkoさんが大量落車についてのデータを調べて提示してくださいました。本当にありがとうございます。月も変わりましたし、コメント欄に埋もれさせておくにはもったいないデータですのでこちらに転載しておきたいと思います。*1

 
 まずはzakkoさんの最初の書き込みより、一件でも落車事故の起こったレースのデータ。

# zakko 『はじめまして。
”競輪見太郎”のデータから落故率を集計してみました。落故率とは、対象レー
スの中で落車あるいは車体故障が発生したレース数の割合で、例えば、100レー
ス中15レースで落車あるいは車体故障が発生したら、落故率=15%となります。

年度 対象レース数 落故率
2003  33472     8.29 %
2004  33260     7.62 %
2005  32239     7.74 %
2006  29988     8.25 %

2006年は2005年に比べて若干(率にして6.6%程)増加していますが、2003年とは
同じ位なので、明確な根拠無しに”最近になって落車が急増している”と主張す
るのは疑問を感じます。

なお、この集計は全レースを対象にしたものではなく、また間違いがあるかも
しれないことをご承知下さい。』 (2007/01/30 16:23)


 次に大量落車のデータ。

落故が発生したレースにおける平均落故車数は全体で1.83車です。これより4
車以上落故したレースを大量落車とするのが妥当でしょうか。その集計は以下
のようになります。

年度 対象レース数 大量落故率(4車以上)
2003  33472     0.639 %
2004  33260     0.544 %
2005  32239     0.599 %
2006  29988     0.624 %

3日間開催に5、6回通い詰めれば1回大量落車に遭遇するくらいの頻度です。
2006年は2003年より少し減っていますが、2004年からだと15%ほど増えていま
す。ただし、発生率が非常に小さいのでこの違いに統計的有意性はありません。

 
 ネブトさんによるG1以上のレースに限った大量落車データ。

03〜06年のGⅠ+GPを対象に、落棄・故棄・再乗・落入・滑入・故入・失格について集計してみました。

年  対象レース数 数出走人数 落故失等 4人以上
03   321      2886    133   9
04   321      2887    120   10
05   314      2825    121   8
06   315      2835    109   9


 以上のデータのどれからも、落車・大量落車ともに別にたいして増えていないことが読み取れます。たしかにzakkoさんのデータでは04年から昨年にかけて微増傾向にありますので、これをもって増えたといえないこともないでしょうが、誤差の範囲内と見るほうが自然だと思われます。こういった統計データに当たることなく大量落車が増えてると主張していた方は、よっぽど感覚が鋭い方なのでしょう。そのような方はその感覚を活かして車券で大儲けするなり、あるいはもっと社会的に有意なことに使っていただきたいと心から願っております。


 最後になりますが、貴重なデータを提供下さったネブトさん、zakkoさんには重ねて御礼申し上げます。

*1:適宜改行を加えました