小嶋敬二のすばらしさ

  
 十年一昔と人は言う


 一昔前


 インターネットという網の中に


 ひとつの掲示板が浮かんでいた


 「ケイジ板」という掲示


 「武藤敬司、小嶋敬二、灰野敬二の話題はココ!」


 2,3の因果者がボソボソと声にならない囁きを


 呻くように


 絞り出していた


 それから


 武藤敬司は社長になり


 小嶋敬二も社長となり


 灰野敬二は変わらずに


 黒い空気を放っていた


 
 小嶋はときに


 破壊者だった


 空気を切り裂くように前段を飲み込む捲り


 そして多くの観衆の思惑を破壊する


 暴走


 暴走には常々悲壮感が付きまとう


 誰かのために身を切る生贄としての暴走


 これしかできないという小さな絶望の元の暴走


 だが小嶋はそれのどれとも違う


 暴走したかったから


 そうしたのだ


 凡人が志向する勝利を


 簡単に凌駕する暴走への欲動


 それが小嶋を走らせていた


 いくたびも彼はそうした


 かつてコジェーヴは言った


 日本的スノビズム


 小嶋は日本人だった


 誰よりも日本人だった

 
 勝利を求め続けるようになった小嶋


 それは以前の小嶋ではない


 草食動物が草を食み


 肉食動物が狩りをするように


 勝利する小嶋


 動物と化した小嶋は


 日本語をうまく解さない


 言葉を紡ぎ出そうとするが


 その文法や単語は意味を放棄する


 それでも紡ぎ出す


 心象風景を


 伝わらない言葉を


 小嶋の獰猛さがわれわれに教えるもの


 それは学科試験の無意味さ 



 えーと、だいたい500字条件はクリアしてると思います。なんでこんなことになったのかはこちらを参照。ここんとこ小嶋はほんとにすばらしい競輪選手になっちゃったので、オチが難しかったですよ。オチ付けろなんて誰にも言われてないですけど。