新春特別企画:エッセー大賞応募作を晒してみる

 いやね、年末に、はてな競輪界いや全競輪ブログ界のおかみさんであるマチコチャンさん(id:machikochansan)とこでエッセイを公開していらっしゃって、そういえばわたしも公開すると言ってたなあと今頃思い出した次第で。そんなわけで以下からです。タイトルは「西宮競輪の追想」です。

 競輪の面白さってなんだろう。それは非論
理的・情緒的な諸々の事由を材料に論理的に
思考を展開する過程の面白さだと考える。も
う少し具体的に言うと、選手の様々なインセ
ンティブや選手間の人間関係を前提に、周回
中のライン同士の前後やその後の展開を、積
み木を積むように予想を組み立てていく面白
さ。経済学に似ているが、より情緒的であり、
人間の臭いがする。人間の臭いが濃厚にする
のに、知的興奮を大いにもよおさせる娯楽と
いうのは他には思いつかない。それが、飽き
っぽい私を10年もこのギャンブル…というよ
り文化と呼んでしまおう…に没頭させている
理由である。
 私が競輪を覚えたのは、今はもうない西宮
競輪場。そこで、先に述べたような競輪の楽
しさ、深さを叩き込まれた。西宮競輪場は当
時21才の私にとってまさに道場のような場所
と言えた。五年以上競輪をやっている方なら
ご存知の通り西宮競輪は、これもすでにない
西宮スタジアムのグラウンドにバンクを設置
して行われていた。そういう変則的な競輪場
ゆえ、バンク全体を見渡せる場所が限られて
おり、レースの全てを目に焼きつけてやろう
という熱意に溢れたファンはその限られた場
所…敢闘門上のバックスタンドの一角に集まっ
ていた。いわばそこは道場主級の猛者の集う
濃厚な空間だったのだ。
 そこでは名も知らぬ客同士がああでもない
こうでもないとレースの予想を戦わせている。
少しでも変なことを言うと、客席の後ろから
でも
「そんなことあるかいな!」
と声が飛んでくるから油断も隙もない。私が
大きく負けることなく10年間競輪を続けてい
られるのは、ここでの修行の賜物である。
 なんだかそんなことばかり書いていると、
この場所が厳しいだけの場所に思えるかもし
れない。もちろんそんなことはなかった。選
手が一たび敢闘門から出てくると、バックス
タンドは様々な言葉の渦に巻き込まれる。声
援はもちろん、豊かなボキャブラリーに裏打
ちされた罵詈雑言の数々も。こう書くとやっ
ぱり厳しい場所みたいだけれども、不思議と
気分が悪くなるどころか感心してしまうよう
な理にかなった罵詈雑言が多いのだ。もっと
も罵詈雑言に感心してしまう私の人格に問題
があるのかもしれないけれども。
 良く言うとフリージャズ的な音場がそこに
は発生していた。バ○、マ○ケ、コ○キといっ
たそこにおいて比較的ポピュラーな単語が気
持ちのいいポリリズムを刻み、その間を、金
網を引っ掴んだ常連のソロイストたちが、レ
ースの構成や内容に即した即興的なフレーズ
や得意の長いフレーズをフリーキーにがなり
たてる。それがなんとも気持ちいいのだ。ま
た人格を疑われてしまうような話だけれども。
 でも、そこにはギャンブル場で当たり前に
あるはずの自由…予定調和や同調圧力から解
き放たれた自由があったように思う。ギャン
ブル場では皆、各々の予想、そして買い目が
全てなはずで、レース前の音楽によく合った
手拍子などナンセンス以外のなにものでもな
い。そういった解放区のような場にも、眼前
において素晴らしいレースが行われたときな
ど、自然発生的に万雷の拍手が巻き起こるこ
とがまれにある。その光景はレース同様本当
に感動的だ。予定調和や同調圧力から無縁の
集団的行動が今の世の中どれほどあるだろう
か。
 そういえばいつだったかの西宮記念のA級
勝戦のレース周回中にこんなことがあった。
その決勝戦には、当時のA級中堅レベルなが
らも人気のある地元の巨漢先行S選手が出走
していた。何周目か、隊列がバックスタンド
に差し掛かったとき、客席から大声で
「Sよぉ!そろそろ大阪場所やのぉ!」
当時の西宮記念も大相撲の大阪場所も3月に
行われていた。スタンドはそのウィットに富
んだ野次に大爆笑。関西の競輪場ならではの
人間味溢れる光景だった。
 今は関西を離れて競輪を楽しんでいる身で
はあるが、人間臭い競輪を愛しつつ、今度は
人間臭い声援のほうも探求して、競輪場の稀
有な空間を守っていきたいと思う。まだ若い
競輪ファンとして。


 エッセーの応募作なのに伏字使うって、ナメきってますよね。全体的にまとまりもないし。そらまあこのブログに過去に書いたことを切り貼りしたような内容ですからねえ。次のチャンスがあればもうちょっと、過去の焼き直しではなく真剣に取り組みたいと思います。金金金金。

 
 そんなわけで今は高松観音寺がホームのわたしのネット打ち初めはもちろん高松F1でした。9R、観音寺最後の星大西祐(91期)のS級初戦です。大西ラインの押し切り差し目ズブズブのスジ3点と、大西-井山・木村を持って観てました。

 大西は前受けから打鐘で引いたところ、9番手を嫌った井山に切り替えられて万事休すの8番手。そこから一気にカマシて出たところ、番手の宇根が切れて別線の女屋にハマられてしまいます。またまた万事休す。ところが強靭な粘りで逃げ切り勝ち。大西-女屋は万コロでした。応援車券なら頭総流しが相場なんでしょうけど、応援車券でもその選手が勝つなりよいレースをすることを前提に車券を組み立てるのがわたしの流儀ですので悔いはありません。大西は強かった。思えば昨年の観音寺お正月シリーズでは、今日千切った宇根に3番手からズブリズブリと食われていたんですよねえ。

 さて、明日は堂々メインの12Rに登場です。いやほんとに立派なもんです。別線も組み立てやすい相手です。え、番手が観音寺のイン突き乞食の香川雄介さんですか。110点持ってる志智と当たってもいいから、それだけはやめて欲しかったなあ。いや、渡部哲男も最初は香川雄介にこき使われながら、今や香川では差せないS級S班に成長しました。これは成長のための試練でしょう。外帯線だけには気をつけて、明日もしっかり先行してほしいと思います。