やっぱり西原理恵子先生には競輪客まんがをお願いしたい

 
 各所で話題の↓、10数年来のサイバラファンのわたしもようやく最近読みましたよ。

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

 絶賛されているのは主に西原の生い立ちや漫画家デビューの頃のお話、あと子供たち(とその親)へのメッセージ的部分ですけど、ほとんど無視されている第三章ギャンブル篇こそ、ばくち打ちには見逃せません。

 いくつか引用してみます。

 負けてあたりまえのものを、なぜ、やるのか?
 それは、ギャンブルが本来は「そういうものだとわかっているけど、だまされることを楽しむ」という、大人の粋な遊びだからだと思う。
 それなのに欲をかいて、本気で儲けようなんて思ったら、ダメなのよ!(p132)

 「だまされる」という点において、博打の駒たる人間の意志がおおいに作用する競輪はその最たるものでしょう。なので楽しみも大きいのです。しかし最近は粋な大人が減って困ります。

 わたしが師匠に教わったのは、まず「負けてもちゃんと笑っていること」。これはギャンブルのマナーの、基本中の基本。(p136)

 ギャンブルっていうのはどうやって勝つかじゃない。負けたときにどう切り返すかだ。ひと月ぶんの稼ぎが一晩でなくなったとしても、そこで言うギャグの面白さを競うくらいじゃないと。(p138)

 これは人間関係の上でも大事ですし、西原先生はそれを飯のタネにしているんですから、プロですよね。ブログで競輪客も発言する時代、いかにヤラレ話を面白く書けるかが、その人のばくちリテラシーを計る尺度にもなります。わたしにはそういう意味で師と仰ぐブログがいくつかありますが、自分はなかなかその域に達せず、もどかしいのです。

人生だってそう。勝つことより負けることのほうがずっと多いし、負けてあたりまえ。わたしにとってのギャンブルは、そういうときの「しのぎ方」を、型破りの大人たちから学んだところだった。(p140)

 いかに負けをこじらさないかを学ぶ学校。ギャンブルは人生勉強です。公営ばくちは授業料が比較的お安くなっておりますのでお勧めです。特に選手の競走ぶりからも人生勉強できる競輪は2倍お得です。


このギャンブルの章では、公営ばくちが地方自治体の収益になったり、テレビで宣伝していることで、違法ばくちと一線を画す扱いをされていることに少し苦言を呈している文章もあります。しかしですね、競輪は今や自治体のお荷物扱いにされているところも多いですし、社会的地位も相変わらず地を這うままです。西原先生は今、久々にばくちを正面から扱ったFXまんがを書かれていますが、それが一段落したら今度は競輪に正面から突撃してほしいのです。伊集院せんせのカット程度じゃなくてね。まず伊集院先生に教えてもらうのがいいですね。

 競輪場には、ギャンブルの要素だけではなく、負けてボロカスに野次られる選手、負けてボロカスに野次る客、その辺で寝てるおっさんなどもおります。無頼にして叙情派の西原先生の才能がフルに活かせる素材がそろっているんですよ。なにとぞ切にお願いしたいところです。