いねむり先生を読んでたら旅打ちがしたくなった。

いねむり先生

いねむり先生

 競輪客としても知られる伊集院静が主に色川武大…本ブログ的には阿佐田哲也ですね、との交流を中心に据えて書いた自伝的小説です。

 麻雀もやりますしお酒も飲みますが、主に阿佐田哲也先生との競輪の旅打ちの様子が綴られています。宇都宮、松山、弥彦…。別に競輪のレースや競輪場の様子の描写が豊富にあるわけではないのですが、スタンドで持病のナルコレプシーのために眠ってしまう阿佐田哲也先生の様子が手に取るように伝わってきて、それが自分の知る田舎の競輪場の風景とマッチして、その場に居たくなってしまいます。もっとも、先生のご存命の頃の競輪場ですから今よりも盛り上がっていたでしょうし、まだアンダーグラウンドな人たちも場内にはいたでしょう。実際、そのような場面もあります。

 そんなのんびりとした田舎競輪場を巡る旅の中で、阿佐田哲也先生の大きく優しい人柄が伊集院静の心を修復していくわけですが、本作を読んでわたしも旅打ちがしたくなりましたよ。普段観音寺や高松の田舎競輪打ってるじゃないかと言われればそれまでですけど、そんなわたしでもやっぱり弥彦とか伊東温泉とか憧れるんですよ。

 旅打ちってもっと注目されてしかるべきコンテンツだと思います。旅情はもちろんのこと、知られざるB級グルメと、決して飾らない旅先の人たちとの交流を楽しむことができます。温泉地の競輪場も多いですしね。あくせくせず、公営ばくち場でのんびりと1日を過ごすのは至福の時間ですよ。以前紹介しました『いい日、旅打ち。』(参照)に楽しみ方が網羅されています。普段ばくちをしない人にも粋な遊びとしてもっと広がらないものでしょうか。