談合社会


 談合が全ていけないとは思いません。田舎で中小の土建屋が、お互い生き残るべく少ない公共事業を分け合う目的で行う談合は、あってもよいと思う。しかし競争社会における強者である巨大企業が談合して旨い汁を吸ってるのを見ると、じつに都合のいい連中であるなあと感じます。ただでさえ脚力上位の外国人選手の二段ロケットに反感を覚えるのと同じような感覚でしょうか。


 今の競輪は前後期制ゆえ、6月は前期末に当たります。宮杯が終わると昇級降級を巡る談合シーズンが本格化。S級の点数や点数不足によるクビの掛かった選手を他の選手がサポートするレースが各地で展開されます。
 

 これについては賛否両論あるでしょうが、わたしは競輪の魅力のひとつであると捉えています。「競輪は人間が走るから面白い」と言いますが、人間は社会を形成する生き物です。そして競輪のライン戦には、日本社会をデフォルメして箱庭的に観察するような楽しさがあると考えます。
 

 この手の談合レースが行われるのは下位戦ですから、選手の皆さんは半年後一年後には自分も助けてもらうことになるかもしれないと考え、賞金を出している客を無視して助け合っているのでしょう。それが我が国の社会、阿部謹也先生言うところの「世間」であります。大変結構。我々ハイエナ競輪客は、それを見抜いて、助け合いの結果生ずるであろう車券の目を買うだけです。
 

 しかし、レースにでる9人のうちの過半数が談合すると、分かって見てるほうも「ここまでやるか」と興ざめですし、点数が掛かっていることに気付かずに見てる客にいたっては、なんのことやら分からずに競輪に嫌気が差してしまい、売上げが落ち以下略かもしれません。談合はライン内に留めて置くのが適当かと思います。
 

 わたしが過去獲ったスジ車券の最高配当はこのレース。中近で3番手を回っていた久保義弘が赤板過ぎに高井広明の前に入ると打鐘からどかーんと先行して、高井が松岡慶彦の捲りに併せてバック番手捲って1着。高井はS級の点数がやばかったのでした。もちろん久保の犠牲先行まで読んでいたわけではなく、なにかあるかもしれないという漠然とした予想でしたけど。今年もひとつよろしくどうぞ。