大ギアダッシュ型の研究(中)


 これの続き


 大ギアを履いたダッシュ型は航続距離を伸ばすことができ、仕掛けどころに幅がでます。具体的には、バック仕掛けの捲りでしか連に絡めなかったのがカマシやホーム捲りでもある程度着をまとめることが出来るようになります。また、前段のペースが上がっているときの捲りは破壊力を増します。


 では、大ギアに弱点はないのでしょうか。
 大ギアを履くと出足が鈍くなります。そうなると勝負所で好位置を占めるための細やかな位置取りが出来なくなったり、ダッシュ型が前で構えている場合にカマシが合わされる危険が高くなります。しかし、大ギアを選択したダッシュ型は位置取りで勝負することを捨てて大ギアを履いたと考えられますので、ひとつめの弱点はそう気にすることではありません。何年か前に、三和英樹(滋賀)が「併走が恐い」というようなことを言っていた記憶があります。三和は3.69〜3.71にギアを上げて数年前に短期間ですがブレイクした選手です。中段争いする意思がないからギアを上げたのでしょう。


 出足が鈍くなることは一概に弱点とはいえません。初速が遅くなればラインの番手三番手が切れにくくなります。捲りで後ろが切れても、その自力選手にとってたいしてマイナスにはなりませんが、カマシを打って後ろが切れれば他のラインに使い捨てにされますから大問題です。客の立場から見ますと、作戦が成功すればスジで決めてくれることが多くなりますから少点数での狙い撃ちができることになります。


 これはダッシュ型すべてにあてはまりますが、スジで狙い撃ちする上でポイントがあります。それはカマシになるか後方捲りになるかをよく吟味することです。捲り勝負と思われて、オッヅもそのように売れている(押し切り目が一番売れてズブズブが売れていない)選手がカマシを打ってズブズブに沈めば、スジで高配当を得ることが出来ます。逆もまたしかり。カマシor捲りの見極めは、レースの種類、ラインの信頼関係、押さえ先行するであろう選手の脚質、他にダッシュ型が同乗していないかなどを検討する必要があります。


 以上のような理屈で5〜6年前、大ギアダッシュ型だった三和英樹(滋賀)と桜井健(徳島)のレースパターンを徹底研究して成果を上げたのですが、ここ数年は新たな駒が見つかりません。理由として考えられるのが、まずは誘導員の追い抜きルールの変更でスプリント戦が減少したこと。これによってどのレースでも最終周回1周前のペースが上がりました。これは大ギアカマシには不利な要素です。そして、S級の若い自力型にダッシュ型が増えたことも挙げられます。押さえ先行もダッシュ型であればカマシが容易に出切れず、叩き合いになり、中段から捲りを狙うラインの勝機になります。

 
 さて、このような状況の中現れた三ツ石は、S級昇格後の戦歴を見るに久々の大ギアダッシュ型の大物といえそうです。