混沌と猥雑ディスクガイド1 ローランド・カーク

Volunteered Slavery

Volunteered Slavery


 ローランド・カークはいわゆるオサレだとかハイソだとかとは無縁のジャズを演奏する人でした。いや、ジャズかどうかも怪しい。特にアトランティックレーベル時代のカークはジャンル分けするのがあほらしくなる、混沌とした、人情味溢れる、黒人の民衆音楽としかいいようのない音楽をやっていました。カークは「盲目の怪人」とよく呼ばれます。サングラスを掛けて、サックスを2本3本いっぺんにくわえて吹きます。しかも軽々と吹きます。得体の知れない感じが大変魅力的です。競輪場にもたまにいてますよね、得体の知れないオヤジ。


 このレコードでは、バート・バカラックスティービー・ワンダージョン・コルトレーンの曲を演奏していますが、どれも猥雑な生命力が付加されています。特にバカラックの「I Say A Little Prayer」が絶品。大友良英さんも昔、わざわざローランド・カークバージョンのこの曲をカバーしていました。


 さきほどアド街を観ておりましたら、東京は下高井戸のJAZZ KEIRINが出ていました。レコードコレクションの中から店主の方が取り出した1枚もカークのレコードでしたね。ローランド・カークは競輪場的な猥雑さと人情の音楽家なのです。