高松競輪場の近所です


 高松競輪場の東側の道を北に向かい、さぬき浜街道を渡って朝日新町の埋立て地に入り、左手にセルフのうどん屋のあるかどを右に曲がると、宮脇カルチャースペースってのがあります。ジュンク堂池袋本店に匹敵する巨大書店です。この辺りの埋立て地は卸団地で、倉庫などの流通拠点が集中しているのですが、もともとこの施設も本の展示場でした。諸々の規制緩和で数年前に小売りもできるようになって、県内ではここでしか手に入らない書籍もいっぱいあることから、ふた月に一度くらい出かけます。


 元々展示場だったこともあって、本は出版社ごとに淡々と並んでいます。一見不便そうですが、かなりマイナーな出版社も網羅しているので場合によっては本が探し易いこともあります。そして、だだっ広いのと、場所が辺鄙なこともあるのですが、客が少なくてゆっくり本が選べるのも魅力です。平日の高松ヒラ開催のバックスタンドくらいゆったりしています。というわけで、本好きの旅打ち競輪客の皆様は高松遠征の際に立ち寄られることを強くお勧めします。頑張れば競輪場から歩いていけます。高松ではレンタサイクルが大変普及してますのでそれを利用すれば楽勝です。


 ・・・だったのですが、今朝の四国新聞を読んで愕然。


屋上に観覧車 MCSリニューアルへ−宮脇書店

宮脇書店香川県高松市)は、国内最大の売り場面積を誇る宮脇カルチャースペース(MCS・香川県高松市朝日新町)をリニューアルする。屋上に観覧車を設けるなど娯楽性を兼ね備えた「本のテーマパーク」に拡充、家族連れを中心に集客増につなげる。オープンは七月中を予定している。本格的な遊戯施設を併設した書店は全国初という。

 地上三階建てのMCSの売り場面積は現在、約六千六百平方メートル。品ぞろえも約六十万点と日本有数を誇る。

 観覧車は直径三十二メートルで、MCSの東側に高さ約十メートルの土台を設けて整備。屋島や瀬戸内海、市街地など三百六十度の大パノラマが楽しめる。観覧車の乗り場となる屋上(約二千六百平方メートル)には、他の遊戯施設や飲食・物販の屋台、アニメキャラクターの大型パネルなども設置する予定。


 本屋に観覧車が必要ですか?記事の完成予想図を見ると、なんの悪夢かと思えてきます。高松市内中心部、宮脇書店本店の目と鼻の先に今秋、紀伊国屋書店が大きな店鋪でもって再上陸*1してくるのを意識したのでしょう。また、ここ数年都会では市街地の商業施設に観覧車を設置するのが流行しましたから、都会の流行に弱い香川県民のメンタリティを考えると、商売的には実にナイスアイデアなんですが・・・ねえ。


 本屋なら棚と平台で勝負せんかい!と思うのですが、宮脇書店にはその自信があまりないのかもしれません。香川県の書店事情はと言いますと、ほぼ宮脇書店の独占状態です。小さな「街の本屋さん」を根こそぎぶっ潰して、雑誌とマンガと学参で稼いでいます。小さな店鋪はもちろんのこと、基幹店に行っても棚に力をあまり感じません。 手書きPOPなどというこじゃれたものにはほとんどお目にかかりません。先日、久々に県内の宮脇ではない本屋に行き手書きPOPや企画色の強い平台を見て、そういえばこれが普通の本屋だったなあと思い出したということもありました。カルチャースペースは問答無用の品揃えなのでそれでも大満足だったのですが・・・。
 

事業費はMCS拡充とと本店改装を合わせて約五億円。同社の宮脇富子社長は「MCSを拡充して多くの人が楽しめるようにすることで、地域活性化にもつなげたい」と話している。


 人の商売のやり方にケチつけてもしょうがないですが、香川県内では高松競輪場・観音寺競輪場と並ぶ数少ない知的空間だっただけに、レジャーランド化は残念としか言い様がありません。書店が地域活性化のためにできることは他にあるでしょ?「地域活性化」という言葉も便利なマジックワードですね。今後競輪の場外を設置しようとする業者は是非とも「地域活性化」を積極的に使って下さい。そしたら一般市民の皆様もこの言葉の虚構に気がつくから。

*1:10年ほど前に出来た高松の「ことでんそごう」のテナントに入ったのですが、そごうが潰れて2〜3年で撤退。