今週読んだ本

在日ヲロシヤ人の悲劇

在日ヲロシヤ人の悲劇


 過去の読書カテゴリーを見ていただければ分かりますが、わたしは基本的に小説読みではありません。小学校まで遡っても、著書を10冊以上読んだ小説家は3人だけ。しかし最近星野智幸にはまりかけています。どれも現代的で実に重く、良い意味で読後感が最悪です。


 この本も、崩壊するインテリ家庭を中心テーマに、イラク人質事件をモチーフにしたエピソードなど、大変ずっしりです。息子に、戦後民主主義者として痛いところ突かれまくる父親が特に。わたしも親になったらこんな父親になるのでしょうか。欺瞞性をごまかすために息子を競輪に連れてってみたりなんかして。もちろんそれもまた欺瞞なのですが。
S級1班


ナショナリズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)

ナショナリズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)


 浅羽通明が『現代日本思想体系』のリメイクとして執筆した第一弾がこれと、『アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)』でした。『アナーキズム』のほうは出てすぐに読みました*1


 10冊の文献を採り上げながら、明治期から現代にいたるまでの日本のナショナリズムのいろいろな側面を提示・解説してゆきます。メジャーなところでは『坂の上の雲』『沈黙の艦隊』『男一匹ガキ大賞』そして小林『戦争論』など。


 もう何年も前の話ですが、それまで役所に出す書類の年号をいちいち消して西暦を書いていたような友人が、『戦争論』読んで急に英霊とか言い出したことがありました。ああ純粋で微笑ましいことだなあと思ったものでした。ナショナリズムが今の日本でどうなっているかの認識も最近までは微笑ましく思う延長線上にあったものですから、2年前は『アナーキズム』だけ買ったんですけど、ここ最近はどうなんでしょうねえ。


 『ナショナリズム』の最後のほうで、浅羽は香山リカの「ぷちナショ」危惧などを一蹴して、今後「国家意識の原点へソフトランディング」してゆくだろうと予測しています。しかし「反日」というキーワードで括られる分かりやすい敵がどんどん投入され、ネットで誰でも情報の授受が出来るようになった結果、予測と違うほうに言ってるんじゃないかなと。


 しかしまあ、あることないことごちゃまぜにして上澄みだけすくい取った「日本の伝統・美学」を教義に読者の自己啓発を促し、自己啓発に忙しいあまりほどよくとろけた脳に中共・日共の陰謀の恐ろしさをささやき、公園で寝泊りするホームレスは日本人の美学に反するから潔く死ねと笑いながら語るどこかの大学の名誉教授の先生はできそこないのカルトにしか見えません。
S級2班

 

*1:旗派競輪客(意味不明)ですから