場間キャリーオーバー実現のために改正が必要な法条項

 競輪における憲法とも言うべき自転車競技法(参照)は、第8条から15条までに車券に関連する規定を置いています。また、車券に関連する規定の詳細は経済産業省令である自転車競技法施行規則(参照)第19条から23条までに委任しています。

 今まで何度も主張して参りました場間キャリーオーバーの実現を妨げている規定は自転車競技法の以下の条文です。

第13条 指定重勝式勝者投票法についての勝者投票の的中者がない場合には、当該勝者投票に係る払戻対象総額は、当該競輪施行者が開催する競輪に係る当該指定重勝式勝者投票法と同一の種別の指定重勝式勝者投票法の勝者投票であつてその後最初に的中者があるものに係る加算金とする。

 この赤字で示した部分が問題なのです。キャリーを発生させた重勝式車券を発売した施行者の開催する競輪にしかキャリーは持ち越せないのです。

 だから例えば、もし今でも西宮・甲子園があれば、西宮・甲子園での競輪開催は両方とも兵庫県市町競輪事務組合という単独の施行者が行っていましたから、西宮開催から甲子園開催へキャリーオーバーできるということになります。門司競輪が存続していた場合の小倉・門司も同様です。両者とも北九州市が施行者でしたから。西宮・甲子園・門司は廃止を急ぎすぎましたね。

 ところで、昨日話題になりましたJRA競馬の重勝式の場合はどうなるのでしょうか。この場合根拠法となるのは競馬法(参照)です。

第9条 重勝勝馬投票法の種別であつて勝馬の的中の割合が低いものとして農林水産省令で定めるもの(以下この条において「指定重勝勝馬投票法」という。)についての勝馬投票の的中者がない場合における売得金は、その金額からその金額に前条の規定により農林水産大臣が定める率を乗じて得た金額及び付録に定める第2号算式によつて算出した金額を控除した残額を、当該指定重勝勝馬投票法と同一の種別の指定重勝勝馬投票法の勝馬投票であつてその後最初に的中者があるものに係る加算金とする。

 自転車競技法13条とよく似た条文ですが、さきほど赤字で示した部分のような規制はありません。JRAはあくまで単独の(公営競技風にいうと)施行者ですからその必要がないわけです。JRAとJKA、名称はよく似ていますが、前者は競技の実施主体であり、後者は競技の振興法人に過ぎません。ややこしいですね。

 一刻も早くこの忌々しい赤字を消し去りたいものです。今のところ今国会に自転車競技法の改正案は提出されていないようです。できることなら今国会で改正を実現し、来年早々には場間キャリーオーバーを実現して欲しい。切なる願いです。