競輪マンガのこれまでとこれから(2)


 昨日の競輪マンガレビューは、あくまで「競輪マンガ」としてレビューしました。つまり、競輪マンガを競輪マンガたらしめているレース描写に焦点を当てました。そういう観点からは、競輪マンガをギャンブルレーサーとそれ以外という風に分類できます。*1


 ギャンブルレーサーは選手の性格や打算や人間関係を詳細に書き込み、それがどのようにレース展開に反映されるかという点を重視した描写となっています。その展開も、図表を使って丁寧に描いています。実際のレースに近い描写と言えましょう。他のマンガはレースに至るまでのストーリーから導き出される選手の感情*2やライバル感情以外の選手の内面を捨て、必殺技に代表される派手な描写でざっくりとレースを表現します。先週ヤングサンデーで始まった『Odds』は初回を見る限り後者に分類できそうです。 


 競輪マンガは一般に分かりにくいと言われる競輪を知らない人に広く紹介する媒体にもなります。では、媒体としてどちらの型が有効なのでしょうか。


 ギャンブルレーサー型は昨日の記事で「教科書」と評しましたように、実際のレースの面白さが分かるようになっています。ただ、どうしてもレースの説明が複雑になりますから、興味を持って食いついてくれればよいですが、そこにいたる敷居は少し高そうです。


 その他(便宜上「必殺技型」とします)は見た目派手で、必殺技の存在に象徴されるように昔からのバトル系マンガのマナーに従って描かれますから、知らない読者には大変分かりやすく、安心して読めるようになっています。ただ、大部分の一般読者はこれをリアルなものとしては見ないでしょうから、実際に競輪場に足を運ぶ動機付けにはなりにくいと思われます。また、そういったマンガをある程度リアルなものとして読んで競輪に興味を持った読者がいたとしても、実際競輪場に足を運んだ際、そこで本来の魅力を発見してくれればよいですが、そうでなければマンガとのギャップに混乱することでしょう。


 このようにギャンブルレーサー型も必殺技型も一長一短があります。眠いので明日に続きます。

*1:レース描写の少ない『ケイリン野郎』はとりあえず無視します

*2:例えば誰それがものすごく応援してくれているから絶対勝たねばならぬ、など