追跡:2012ひろしま 広島・競輪事業、黒字確保も売り上げ低迷 市、廃止含め検討

同競輪場によると、昨年度の車券売上額は107億7832万7000円で、10年度より約1400万円増えた。入場者数は約1万人減の9万3959人だったが、地元紙への出走表掲載を手控えるなどの経費削減を進めた結果、黒字を確保したという。

事業自体はこれまでの内部留保が約10億円あるというが、「廃止した場合の施設の解体費や、職員への手当を含めれば楽観視はできない」(競輪場関係者)という。

 前々回、広島競輪の懇談会にいたる経緯をまとめましたけど(参照)、今回の記事で目新しい点といいますと2点あります。ひとつは昨年度の収支が黒字だったこと。これは存廃論議において存のほうに働きますね。

 もうひとつは10億円の内部留保です。これは情勢次第で存廃どちらの材料にもなりますね。競輪界全体に売上や収益構造の改善が見られれば、じゃあ古い施設を建て直して頑張ってみようかということになりますし、展望が開かれなければ内部留保があるうちにそれを廃止費用の原資にしてやめちゃおうかということになります。

 いずれにしても、7日に開かれる第一回目の懇談会で会の性質や方向性が示されると思いますから注視したいところです。

競輪場ですてきイベント2つ。

 今週末と来週末ですけど、京王閣と名古屋の両競輪場でちょっと面白そうなイベントが開かれますよ。イベントと言っても純然たる競輪客向けイベントではないんですけど、とってつけたような、あるいは単に場所を貸しているようなものではなく、競輪場という施設の様々な文化的側面をしっかり活かした楽しそうなイベントです。

 まずは京王閣のほうからいきましょう。早速明日明後日の開催になりますが、東京蚤の市(公式サイト)という「古いもの」をテーマにしたイベントが開かれます。こちらは京王閣のサイトにも情報が掲載されていますね(参照)。同時にガールズケイリンのフォローアップ訓練も行われるのですが、ガールズケイリンの雰囲気は華やかですから、レトロムードを楽しみにきたお客さんの目にどう映るか、期待半分不安半分といったところでしょうか。公式サイトの京王閣の紹介には

もともとこの敷地は、旧京王電気軌道(現在の京王電鉄の前身)が開設したレジャー施設でした。レジャー施設としての「京王閣」が誕生したのは1927年6月1日のこと。園内には総大理石貼りの大浴場、和洋食のメニューも多彩な大食堂、カフェ、ビリヤード場などの各種遊戯施設を完備した鉄筋3階建ての本館と、メリーゴーラウンド、ウォーターパークや演芸場を備え、その規模は東京近郊では最大を誇り、そこは「関東の宝塚」と称されるほどだったとか。それらが取り壊されたあと、その敷地にできたのが「京王閣」競輪場。日々、激しい競技が繰り広げられる場所でありながら、レジャー施設だったころの名残が、どこかのどかな雰囲気をこの場所に漂わせています。

 とありまして、今の競輪場の雰囲気を分かったうえで使ってくれてるんだなあというのが分かります。昔と違って恐い人とかいませんしね。ずいぶんきれいになっちゃった競輪場もありますけど、多くの競輪場はレトロムードを漂わせています(お客含めて)。そうした雰囲気を好む人は最近都市部を中心に多いですから、是非競輪場に親しんでもらいたいと思います。競輪場だけでなく公営競技施設のレトロな雰囲気に焦点を当てた書物としては須田鷹雄さんの下の本がありますね。


 そして来週末の名古屋です。こちらはうって変わってカッコイイ自転車のイベントです。バイシクルメッセンジャーを中心としたアマチュアの競技大会が開かれます(公式サイト)。NYで始まったイベントの日本上陸だそうです。海外のサイクルカルチャーは日本の競輪をリスペクトしてくれてますからね。そういった関心が日本でも広がるとうれしいですね。日本でも京都のメッセンジャーの皆さんなどは向日町競輪場を盛り上げようと活動してくれていたり、もちろん車券も買ってくれます。京王閣のイベントの日は発売日ではないのですが、名古屋のほうは西武園記念の場外もやっています。バンクで楽しんだ後は是非プロの走りを車券を握ってエキサイティングしながら楽しんで欲しいと思います。

 こういう動きが日本でも本格化して、サイクルカルチャーの世界的なイベントが日本の競輪場で開かれるようになるとうれしいですね。

広島市、競輪存廃へ懇談会

広島市は、売り上げが低迷している競輪事業の存廃を考える懇談会を設置することを決めた。大学教授や連合広島の関係者、市議、競輪選手、地元住民たち11人で構成。6月7日に南区の広島競輪場で初会合を開く。市は懇談会の報告を受け、競輪事業を廃止するかどうか判断する。

廃止する場合には、選手や窓口の車券販売などの臨時スタッフ、警備員たち計約400人の雇用問題が浮上。敷地は国有地で、施設を数億円かけて解体した上で国に返還する必要がある。跡地活用も含めて課題は多い。

 広島競輪の存廃論議ですが、始まりは2010年にさかのぼります。まず2010年の11月に事業仕分けによって「実施(民間企業等へ委託)」と判断されました(参照)。その後、2011年に就任した新市長が事業仕分けちゃぶ台返し。10年度の赤字を受けてのことか、廃止を軸に検討されることになりました(参照)。

 そういった流れを受けての今回の懇談会になります。このような組織は一宮や向日町、奈良、さかのぼれば西宮甲子園でもありましたが、それらはいずれもいわゆる「外部の有識者」によって組織されていました。今回の懇談会はメンバーにステークホルダーが多く含まれそうなところが大きく違います。どのような結論になろうとも「外部の有識者」によるものよりは有意義なものになるのではないでしょうか。このまま競輪の衰退が進むとき、モデルになるような懇談会にして欲しいと思います。

 Twitterで教えていただいた話。広島競輪には従業員労組があるとか(参照)。なので懇談会に連合関係者が参加するのでしょうね。労組の力が大きく存廃を左右しそうです。

 また、競輪場の敷地は国有地とのこと。賃料の額などちょっと調べましたが分かりませんでした。賃借料や施設利用料などの高コスト要因のある場に存廃問題が浮上する傾向は相変わらずですね。

チーム中野はケイリンの金メダルを獲りにゆく。

 ロードとトラックの自転車のロンドンオリンピックパラリンピック日本代表候補選手が決まりましたね。自転車トラック男子は事実上、渡邊一成、新田祐大中川誠一郎、雨谷一樹の4人のうちから3人、というよりも新田か雨谷のどちらを選ぶかという情勢だったわけですが、新田を選びました。前回までの五輪のようにチームスプリントを最優先すれば長塚以来の第一走者のスペシャリストである雨谷を選ぶのがベストなわけですが、新田を選んだ理由はこちらの記事(参照)の中野強化委員長のコメントにあります。

どの種目が一番メダルに近いかを考えながら、派遣、強化を行ってきた。メダルに一番近い種目はケイリンだと考えている。ケイリンの強化、脚力の強化をはかり、最終的に全選手記録が伸びた。
最終的に雨谷くんを選ぶと、他の種目が自動的に誰が出場するか決まってしまう。

今回選ばれた3人がチームスプリントを走ることは決まっているが、他の個人種目に誰が出るかはまだ決めていない。その種目に一番力を発揮できる選手を選ぼうと思っている。チームの中には競争がないといけない、競争がいつまでも続いたほうがいいのでは、というのが私の考え。

 短いですが、記者会見の動画です(参照)

 こう言ってはなんですけど、雨谷は個人競技の実績では他の三人に劣りますからね。それにチーム中野の大テーマは競輪でも競技でも勝てるスーパースターを輩出することです。雨谷はまだ若い。アテネ五輪選考でもれて北京で雪辱した永井清史のようにこれをバネにして、競輪でも個人競技でも上に上がって欲しいと思います。次の五輪では必ず必要な人材です。

 さて、この3人でチームスプリントを戦い、うち2人が(ないし1人が掛け持ちで)個人競技ケイリンとスプリントに出場ということになりました。スプリントではこれまで200mTTのタイムが足りずに苦戦を強いられてきましたが、ここにきて日本勢も渡邊が10秒の壁を破るなど急成長。中川誠一郎も世界選で10秒フラットを出しています。新田は現状タイムが足りない状況ですが、一番若ければ伸び代も大きいでしょう。

 そして最重要種目のケイリンケイリンで金を取ってこそ真のスーパースターです。もし五輪を通じて他の種目の日本勢が低調な中ケイリンで金メダルを獲ればひょっとすれば競輪人気復活の目もなきにしもあらずです。そういう意味でも最重要種目なのです。ケイリン代表には今のところの実績では渡邊一成が一歩リードでしょうか。しかし新田も渡邊同様、先の世界選予選で勝利しています。新田はTT以上に実戦で強さを発揮する選手ですからケイリンこその期待が持てます。中川誠一郎さんはケイリンよりもスプリントのタイプでしょうか。渡邊・新田を中心に竸って竸って競りまくって高みを目指して欲しいところです。


 そうそう、もう一人ロンドンを走る競輪選手がいます。伊藤保文がパラリンピックにタンデム種目のパイロットとして出ます。こちらにも注目です。

 
 去年発足したチーム中野は着実に力を付けてきています。今までは世界選で惨敗後、何ヶ月かでなんとか間に合わせるといった感じでしたけど、今回は世界選でも一定の成果を出しました。メダルに一歩届かなかったといったあたりが五輪本番へのモチベーションとしてはよいほうに出るかもしれません。競輪選手が出る5回目の五輪ですけど、今回が一番やってくれそうな予感がします。もしケイリンに銭が賭けれたらもちろん、白・グレー・赤の三色のジャージに賭けますよ。
 

武雄競輪の歌を聴こう。

 武雄記念やってます。なんだかあれから一年って感じがしますね。あれっていうのは去年の武雄共同通信社杯ですよ。その社杯の前から西日本では競輪が再開されていましたが、東日本では震災の影響で発売がない状況。そんな中、経費が莫大にかかるG2の開催に踏み切り、競輪再開の花火をどーんと打ち上げてくれました(当時の競輪の状況はこんな感じでした)。

 そんな武雄で行われている記念ですが、面白い場内イベントがあったようです。まだ買い目ごとに窓口が別れていた大昔に穴場のおばちゃんたちの間で歌われていた「武雄競輪の歌」が何十年かぶりに復活したとのこと。

 いや〜これいい歌ですね。場内の手拍子もなんだかあたたかくて田舎競輪のゆったりとした空気が伝わってきます。歌詞はこちらのブログにありました(参照)。

 復活した経緯がまた面白いのです。昔穴場のおばちゃんだった80歳のおばあさんから武雄競輪の歌のことを聞いた先程のブログ主の方が、この歌のことを調べていき、Facebookで友達申請した闘将佐々木昭彦(なんでも武雄競輪活性化委員会会長をつとめているとのこと)に繋ぎます。そして元選手の方が歌と演奏をすることになり、記念でのお披露目となったとのこと(経緯はこちらこちらを)。人情話がFacebookで繋がっていくのが武雄市らしいところです。ぜひ競輪にも熱心な武雄市長さんにもこの話をブログやFacebookで取り上げてもらいたいものです。

 武雄競輪の歌といえば、友川カズキさんの「夢のラップもういっちょう」にも武雄の描写が少し出てきますね。

 
 この描写からも田舎競輪ののんびりとした様子が伝わってきます。106点しか持ってない地元エース荒井崇博が2連勝なんかしちゃってるのもそれらしくていいですね。観音寺を失ったわたしにはうらやましい。なんだか地元に欲しくなる競輪場です。明日明後日天気が悪くなるようですが、楽しく打たせてもらいたいと思います。

11年度総売り上げ、20年連続で減少/競輪

2011年度の車券の総売り上げが10年度比98・1%の6229億3693万2200円

総入場者数も10年度比91・5%の489万8633人だった。

 10年度と11年度は震災の影響を大きく受けましたから単純比較はできません。そこでまず開催日数を調べて比較してみました。ソースは広報KEIRIN(参照)。及び2012年3月に関しては手集計しました。

 10年度 2509日
 11年度 2492日

 17日ほど少なくなっています。0.7%ほどの減少ですのであんまり関係ないですね。ただ、比較的入場者数が多い取手が全休、いわき平が4月5月お休みで9日少なくなっています。この辺りが総入場者の大幅減に繋がった可能性はありますね。あと、大きな変化としては小松島の開催日数がいわゆる観音寺方式で31日になっています。

 G1G2は10年度、11年度とも開催日数は変わりません。ただ、11年度の最初のG2レースとなった武雄共同通信社杯は東日本で場外が行われなかった関係でG3並の売上にとどまりました。G3開催にも混乱がありましたが、トータルで2節、11年度のほうが少なくなっています。

 そこで10年度の売上から11年度の売上を引いてみますと、634,988,196,660-622,936,932,200=12,051,264,400となりまして120億円ほどの減少になります。おや、ちょうど記念2節分ですね。記念が減ったぶん、その銭はどこかに放りこまれているわけで、これをもって下げ止まったとは言いませんが、大健闘の部類だと思います。そしてこれは年度ではなく1〜12月の計算になりますが、11年は50億円にも及ぶ賞金総額の減額がありました。(参照PDF)。選手にとってはしんどいですが、少しは経営が持ち直した施行者も多いのではないでしょうか。

  

バンクをみんなに。

 なんだかね、先月末の観音寺バンク開放の余韻にまだ浸ってるんですよ。その後すぐ旅行とか行ってるんですけど、観音寺のバンクで走ったり歩いたりぼーっと佇んだりしたときの開放感が忘れられません。バンクに入ったのは初めてではないんですよ。去年の岸和田全日本選抜の際に歩いたことがあります。

 それは普段散々外から見ていることもありましょうし、戦いの場という非日常空間の祝祭性にもよるのかもしれません。とにかくなんとも言えず気持ちがよかったですね。

 この感覚は競輪客だから味わえる部分もあるでしょうが、普通の想像力があればたいていこの空間の気持ちよさを感じてくれるんじゃないかと思います。そんなわけでして、この快感をどんどんみんなに味わってもらいましょうよ。競輪場に来てくれるきっかけになります。

 ただ単にバンクを開放しましたでは人はなかなか集まってくれません。なにかのイベントをやりましょう。コンサートなどもいいかもしれませんが、音と舞台装置によってバンク本来の「場」は覆いつくされてしまいますからあんまり効果はないかもしれません。

 バンク本来の場の感覚を活かすならレースをやるのが一番です。本来競走場ですからね。ただ、本格的な自転車レースは敷居が高いですし、ママチャリレースはなんだか色モノです。

 伊豆のベロドロームのブログでこんな記事を見つけました(参照)。今、子供用のプレ自転車として大人気のストライダーのレースをやってるんです。これいいですね。どんな様子か、毎年平塚競輪場で行われています湘南バイシクルフェスでのストライダーレースの動画を観てみましょう。

 Youtubeには親が撮ってアップしたものでしょう、ストライダーの動画がいっぱいあります。親も一緒になって楽しんでいるんです。ストライダーの人気はそのファッション性、スポーツ性だけではなく、後に自転車に乗るときのためのバランス感覚養成の意義が大きいので一過性のものではありません。

 せっかくだからバンク、もちろんカントのない内のほうを使うわけですが、そっちのほうでやったほうが盛り上がらないかなあ。そして最近気になる記事がありました。

ペダルなし自転車、公道走らないで…消費者庁

 流行りだすとどうしてもこういうことになります。ということはランニングバイク走行を安全に行える場所のニーズが確実にあるのです。

 そして今流行ってるレースと言えばミニ四駆ですよ。こちらもかつて80年代に楽しんだ世代(我々団塊ジュニアがメインです)が子供を巻き込んで盛り上げています。今年はミニ四駆30周年ということで13年ぶりにジャパンカップが行われるとのこと。ミニ四駆のコースといえば、コンパクトでクネクネしたものというイメージですが、競輪場のバンクを利用したダイナミックなロングコースができないでしょうか。

 競輪場の一番の売り物はバンクです。スタンドはボロでも競走の公正上、バンクはきれいにしておかないといけません。そんなバンクをもっと有効活用できれば競輪を盛り上げることにもなるんじゃないでしょうか。